向こう岸に渡ろう
2016年 06月 10日
テーマ 礼拝
聖書 マルコによる福音書4:35~41
2016年5月22日 協力牧師 北島靖士
友人の牧師がこんなことを話していました。彼は長年牧師を続けていましたが、自分
の教会の課題が何であるのか、わからなくなってしまったことがありました。その時彼
は日頃私淑している自分の先生を訪ねて「教会の課題は一体何でしょうか」と尋ねまし
た。その先生はしばらく沈黙しておられましたが、やがて「わたしたちがこうしている
ということは、ラクダが針の穴を通ったということかもしれませんね」と答えられたと
いうのです。友人の牧師は「ラクダが針の穴を通る」(マルコ10:25)という表現には
大変驚きました。そして先生が「礼拝ということは、らくだが針の穴を通るような奇跡
だ。礼拝こそ教会の一番の課題だ」と言われていることがわかったのでした。
そうです。礼拝は神が引き起こされる奇跡です。主なる神礼拝は決して人間の側から
は起こりません。人間の要請によっては起こりません。人間の要請によっておこる礼拝
は、人間の欲望に仕える神を礼拝する礼拝です。人間の要請からなされる礼拝にもう一
つ重要な問題があります。漢字の「禮」はもともと宗教的な意味をもっていたと考えら
れますが、やがて「君子」の個人倫理の一つと考えられるようになりました。日本でも
「斉国修身」の方法となり、「礼楽」として政治体制の規範となりました。そして、何
を礼拝するのかが曖昧になってしまっていたところに、明治以降「現人神(あらひとが
み)」としての天皇をはめこんだのです。戦時中の教会には礼拝の始めに宮城遥拝を中
心とする「国民儀礼」が強制され、教会はそれを受け入れました。すなわち天皇を先ず
礼拝し、その次にキリスト教の礼拝が始まったのです。
イエスさまはマルコ4:35で「向こう岸に渡ろう」と言われました。イエスさまの言葉
があって初めて、弟子達の向こう岸(神の国)への旅路ははじまります。礼拝が始まる
言葉は「招詞」です。招詞は礼拝が人間の側、人間の要請からではなく、神の招きによ
ってしか、始まらないことを表しています。ですから司式者は招詞を神の言葉として宣
言する必要があるのです。そして、向こう岸に渡った人間はそこでまたイエスさまの
「向こう岸に渡ろう」との言葉を聴き、こちら側の岸に戻ってきます。礼拝においては
(祝祷ではなく)「祝福と派遣」によってこの世界へと遣わされてゆくのです。
聖書 マルコによる福音書4:35~41
2016年5月22日 協力牧師 北島靖士
友人の牧師がこんなことを話していました。彼は長年牧師を続けていましたが、自分
の教会の課題が何であるのか、わからなくなってしまったことがありました。その時彼
は日頃私淑している自分の先生を訪ねて「教会の課題は一体何でしょうか」と尋ねまし
た。その先生はしばらく沈黙しておられましたが、やがて「わたしたちがこうしている
ということは、ラクダが針の穴を通ったということかもしれませんね」と答えられたと
いうのです。友人の牧師は「ラクダが針の穴を通る」(マルコ10:25)という表現には
大変驚きました。そして先生が「礼拝ということは、らくだが針の穴を通るような奇跡
だ。礼拝こそ教会の一番の課題だ」と言われていることがわかったのでした。
そうです。礼拝は神が引き起こされる奇跡です。主なる神礼拝は決して人間の側から
は起こりません。人間の要請によっては起こりません。人間の要請によっておこる礼拝
は、人間の欲望に仕える神を礼拝する礼拝です。人間の要請からなされる礼拝にもう一
つ重要な問題があります。漢字の「禮」はもともと宗教的な意味をもっていたと考えら
れますが、やがて「君子」の個人倫理の一つと考えられるようになりました。日本でも
「斉国修身」の方法となり、「礼楽」として政治体制の規範となりました。そして、何
を礼拝するのかが曖昧になってしまっていたところに、明治以降「現人神(あらひとが
み)」としての天皇をはめこんだのです。戦時中の教会には礼拝の始めに宮城遥拝を中
心とする「国民儀礼」が強制され、教会はそれを受け入れました。すなわち天皇を先ず
礼拝し、その次にキリスト教の礼拝が始まったのです。
イエスさまはマルコ4:35で「向こう岸に渡ろう」と言われました。イエスさまの言葉
があって初めて、弟子達の向こう岸(神の国)への旅路ははじまります。礼拝が始まる
言葉は「招詞」です。招詞は礼拝が人間の側、人間の要請からではなく、神の招きによ
ってしか、始まらないことを表しています。ですから司式者は招詞を神の言葉として宣
言する必要があるのです。そして、向こう岸に渡った人間はそこでまたイエスさまの
「向こう岸に渡ろう」との言葉を聴き、こちら側の岸に戻ってきます。礼拝においては
(祝祷ではなく)「祝福と派遣」によってこの世界へと遣わされてゆくのです。
by hachimejibap
| 2016-06-10 10:46
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